2.あじを彩る塩

1.味覚のシグナル

2麻・辛の世界

3.日本発「UMAMI」

4.うま味はアミノ酸+塩

1.味覚のシグナル

食べることは人の生命を維持するうえで極めて需要なことで、味覚のシグナルに応答する神経細胞が欠乏している栄養素を補うために、身体が必要とする栄養素を調節しつつ生体の恒常性≪ホメオスタシス≫を維持している。

食事は、視覚、嗅覚、触覚、聴覚などの五感や、空腹、気温、食事の際の雰囲気など、さまざまな感覚が統合されて、食欲を感じる。美味しい料理は、自律神経を興奮させ、ノルアドレナリンを分泌、エネルギーの代謝を亢進させる。

美味しいと感じる味覚は、身体を維持するのに必要なたんぱく質やカロリーとなる脂肪のシグナルだといわれ、身体がエネルギー源を求めているからである。

美味しいものを食べたあとには、体温が上昇することが認められており、食欲は、生存のための生理的な現象である。

舌で感じる味は、甘味・塩味・酸味、苦味・旨味の五つの基本味で、甘味はエネルギー源である糖のシグナル、塩味は電解質であるミネラルのシグナルで、電気信号の伝達する役割を担っている重要な栄養素である。塩化ナトリウム≪塩≫はナトリウムイオンと塩素イオンとの両方に分れて、はじめて塩味を知覚できる。

酸味は腐敗物のシグナル、熟していない果物を見分け、苦味は毒性ある有害な食物を予知するするシグナルである。さらに食べ物が消化しているときにも、味覚は、消化器官に分布している迷走神経から脳に伝達される。

味覚のシグナルは、舌の表面にある乳頭という細かな突起にある味蕾で味を感知し、電気信号に変換、神経を通して脳に伝達されて、どんな味かを認識する。

味蕾は一万個あるといわれ、いろんな味を均一に知覚するのではなく、場所によって違っている。塩味、酸味は、おもに舌の周辺近くで感じ、味細胞の細胞膜に直接作用し、イオンチャネルを通して知覚される。甘味は舌先、酸味は舌の周辺、苦味と旨味は、舌の根で感受する。辛味は痛みなどの感覚を伝える三叉神経に存在し、美味しい料理に辛味が結び付くと、脳で美味しさを感じる。

人には味覚、嗅覚、視覚,触覚などの五感を働かせ、身体に害をおよぼす嫌な臭いを嗅ぎ分け、腐ったものや異常な味を見分けることによって、身体に有害な食物を一刻も早く察知し、味覚に過敏に反応する自己防衛の仕組みが備わっている。

味覚する濃度の高い順は、甘味、塩味、酸味、苦味の順で感じる。甘味やうま味に反応する味覚の受容体は一種類で、苦味を感じる受容体は、20種類以上あり、これによって、酸味や苦味はごくわずかな濃度でも敏感に味覚される。

甘味は0.5%、塩味では0.2%、旨味(グルタミン酸ナトリウム)0.03%で味覚されるが、酸味0.0012%、苦味(キニーネ)で0.00005%と、ごく僅かでも植物の中には強い苦味を持つ猛毒を含んでいる植物もあり、野生動物にとって、毒のあるものや腐敗したものを見分ける味覚センサーが狂うと死につながる。

但し、人は大人になるとコーヒーやサンマや鮎の腸などの苦味を美味しいと感じる嗜好があり、苦味の感受性は、単に毒を見分けるだけでなく、コクのあるうま味を味わうのに大切な役割を担っている。

2.麻(マー)・辛(ラー)の味

辛味の代表的な調味料は唐辛子である。その主成分は油に溶けているカプサイシンで、交感神経を刺激して発汗させる作用があり、寒冷地や高温高湿に住む人たちの料理の食材として使われ、独自の料理文化が育まれている。

東洋医学では、「辛味は気を高ぶらせ、血の巡りを良くする」といわれ、外敵から身を守るために緊張をうながすホルモンを活発にし、脂肪を燃焼・分解して身体を温める効能を持っているといわれる。

中国の四川盆地は、冬は霧が多く温暖であるが、夏は盆地特有の高温多湿の酷

暑となる。わが国にも馴染み深い麻婆豆腐や坦坦麺もここ四川生まれで、四川料理の特徴である、あのピリッとした舌しびれる辛さは、盆地固有の気候風土から生まれたもので、食欲を刺激し、汗で消耗する塩分を補充する働きがある。

四川の坦坦麺には汁がなく、挽肉と唐辛子の紅油に麺をからめて食べる。はじめの口当たりは甘く、次第に辛さが口いっぱいに広がる、「麻・辛」の世界である。

四川料理では、調味料の主役は塩で、しっかりした塩味を主張している。塩炒め、味噌漬、塩漬魚、牛肉の煮込み、塩の水煮など、じつに多彩な塩の料理がある。

四川料理は、単に辛いだけではなく酸味、甘味、苦味に辛味と塩味の五つの味がハーモニーを奏でた多彩な料理を味わうことができる。元代以来、中央の役人が料理人をつれて赴任したことで、独自の味に洗練されてきたといわれる。

四川の家庭料理に欠かせないのが漬物の泡菜である。季節の野菜を塩水と酒、砂糖、干した唐辛子などで漬けた漬物で、一夜漬、古漬けと多彩な漬物があり、そのまま食べるほかに挽肉の炒め物に使う。料理に使う塩は、地元の≪井塩(セイエン)≫である。井塩は、井戸を掘り、地下の岩塩層に水を流し込んで濃い塩水を汲み上げ、それを釜で焚く。自流井ともよばれ、漬物に馴染むしっとりとした塩である。

現地の人が、泡菜づくりに井塩しか使わないわけは、海塩には、にがりのマグネシュウムが強く、その風味が嫌われているようである。

“天府の国の百菜百味”と称される四川の食文化は、高温多湿の気候風土と豊富な食材と地元の塩が三位一体となって醸成された文化遺産である。

 

3.日本発「UMAMI」

古代中国では、鹹(塩味)、甘、酸、苦、辛の五つ味が基本味とされ、仏教では塩味、甘味、酸味、苦味,渋味、辛味の六つの味覚をあげている。西洋では古代ギリシャのアリストテレスが、塩味、甘味、酸味、厳しい味、鋭い味、荒れた味の七つの味に分類して以来、いろんな説が提唱されてきた。

1916年、ドイツ人ヘニングが絵の具の三原色のように、食物の味覚は、塩味、甘味・酸味、苦味の四原味が混ざりあって、甘辛い味、甘酸っぱい味など、いろんな味が作られるという考えを提唱。以来、料理界の定説となっていた。

1908年(明治41年)、東京帝国大学の池田菊苗教授が、湯豆腐の鍋に敷かれた昆布をヒントに、昆布に含まれるアミノ酸、≪グルタミン酸≫がうま味成分であることをつきとめ、四つの基本味ではつくれない五番目の基本味、「うま味」の存在を発見した。1913年には、池田菊苗教授の高弟、小玉新太郎が鰹節のだしのうま味が核酸系のイノシン酸であることを発見、さらに、1957年にヤマサ醤油の國中明が椎茸から核酸系のうま味成分、グアニル酸を発見、次々にうま味成分がつきとめられた。

近年になって、味覚の研究が進むにしたがい、四つの基本味説では味覚を論じることができないという認識が高まり、池田が命名したうま味は、1985年にハワイで開催された「第一回国際シンポジウム」で五番目の基本味「UMAMIとして認められ、世界の共通語となった。その後、グルタミン酸とナトリウムを結合して、グルタミン酸ナトリウムを主成分にした調味料、「味の素」が開発されたのである。

このように20世紀になってタンパク質や核酸を豊富に含む細胞の原形質にうま味が含まれ、それを感知する味覚がうま味であることを、日本人の三人の化学者によって発見された背景には、昆布や鰹節などの海産物の乾物をつかった伝統的な「だし」の和食文化の土壌にあったからである。欧米では、もともと肉や乳製品など、うま味のある食材が中心であったので、調理にうま味成分を加える必要がなかったが、日本人は古くから淡白な味の米を主食にして、味噌・醤油などのうま味のある調味料がつかわれてきたことがうま味に敏感な味覚が身についた。

2000年、舌にある味蕾の感覚細胞にグルタミンを感じ取る「グルタミン酸受容体」が発見された。味噌・醤油のうま味の正体が、グルタミン酸であることが解明され、いまや、世界中のシェフがうま味に注目、和食は国際的な味覚になっている。

 

4.うま味を創るアミノ酸+塩

うま味の味覚は、生命の維持に欠かせないたんぱく質のシグナルである。たんぱく質は、20種類のアミノ酸が結合してできており、筋肉や臓器をつくり、酵素の成分として生命活動を維持する重要な役割を果たしている。

食物に含まれるたんぱく質は、消化酵素によってアミノ酸になって吸収され、血液にのって全身に運ばれ、細胞内で酵素やエネルギーをつくる。

アミノ酸にはそれぞれ複雑な味を併せ持っている。それらの割合や量、組み合わせの変化で、料理の美味さが決まる。グリシンやアラニンなどは甘味、バリン、ロイシンなどは苦味、そしてグルタミン酸やアスパラギン酸には酸味、また甘味を持つプロリンには苦味もある。

しかし、鰹節や昆布だしだけでは、味がわからない。アミノ酸だけを混ぜても弱い味しかないが、アミノ酸にミネラル≪塩≫が加わることで、はじめてアミノ酸独自の味の輪郭がはっきりとし、うま味を感知することができるのである。

相手の味を強調する塩の対比効果がうま味の決定に大きな役割を果たしている。

和食では、昆布でだしをとった後、さらに鰹節でだしをとる。アミノ酸系のグルタミン酸と核酸系のイノシン酸やグアニル酸とを合わせると、単独の時よりもはるかに強いうま味が得られる。うま味成分には相乗効果があるのが特徴である。

世界中の料理が動植物のうま味の抽出物を組み合わせ、基本味として利用している。欧米のスープには牛のすね肉、セロリ、玉ねぎが、中国料理には、鶏がら、生姜、ネギがつかわれる。トマトは野菜の中では、グルタミン酸やアスパラギン酸が豊富で、トマトがソースのベースとして使われ、トマトを原料にしたケチャップが調味料として使われている。グルタミン酸の多いトマトや核酸に富むアンチョビソースやキノコのスープなども、共通したうま味の相乗効果を利用したものである。

2015年4月から厚労省は、科学的に効能が立証された食品を「機能表示商品」と表示できることを認めた。現在、アミノ酸は、発酵法によって大量生産されるようになり、アミノ酸効果を狙ったサプリメントが続々と市場に登場している。

 

 

 

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増田 幸右 について

1964-1968 武蔵野美術大学 グラフィックデザイン科卒業 1968-1994 広告代理店電通入社 クリエーティブ・ディレクター 2002-2004 立教大学大学院 修士課程 2003-2008 (株)GN21 経営コンサルタント 2007-2010 浦安図書館ボランティアBCU会員 2010-2014 企業ブランドアドバイザー 2006-2014 日本海水学会員
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