Ⅱ.塩の逆襲 ソルトパラドックス

5.官民一体の減塩運動

わが国の高血圧の人口は、約4000万人ともいわれている。これは、厚労省の定めた高血圧の基準値を超えた人の数で、医師の診断を受けて高血圧の治療している人は、約800万人にすぎないという医療統計がある。

高血圧は自覚症状もないのでサイレントキラーと呼ばれ、高血圧の状態を改善しないでいると脳卒中や心筋梗塞、腎臓病を起こす危険性が高くなる。

現在、日本人にはどのくらい食塩摂取量が適量であるかという研究データはないが、WHOの国際高血圧学会や日本高血圧学会のガイドラインでは、6g未満を推奨し、厚労省の塩分摂取の目標値は、大人一日8グラムを基準にしている。

ちなみに病院食の塩分量は一日6g(小さじ一杯の塩の量)と決められており、その理由は、6g以下に抑えなければ、高血圧薬の効果が望めないという、臨床の常識が基になっている。

最近、わが国の官民挙げて減塩キャンペーンの動きが高まってきている。厚労省をはじめ、医師や栄養士の減塩指導は一層強まり、大手コンビニでは「健康弁当」が売られ、食品業界では、減塩商品が次々と開発されている。「塩リスク」という言葉が語られるほど、減塩運動が盛り上がっている。厚労省は1015年四月から、スーパーやコンビニ、外食、食品メーカーなどに減塩マークの表示の使用を認可して厚労省お墨付けの健康食品を推奨している。

高血圧の原因は塩分の摂り過ぎだという減塩信仰が高じて、塩は減塩運動の標的になっているが、高血圧患者の80%は、原因がはっきりと分かっていない「本態性高血圧」だといわれている。

高血圧発症は、遺伝、肥満、ストレス、腎臓疾患など、さまざまな要因により、血圧を高め、動脈硬化を誘発するが、塩の過剰摂取は、その原因のひとつでしかない。

ではなぜ、塩だけを標的とした減塩運動が起こるのか、その背景には、二つの狙いがあると推測する。ひとつは、厚労省の医療費の右肩上がりの増加を抑える意図と、もうひとつは、現代の食卓の大半が加工食品で占められ、食品業界にも減塩商品の開発を求めて社会的に減塩問題を解決しようとする動向である。

5年ごとに実施される厚労省の「医療費の動向調査」によれば、2010年度の国民全体の総医療費が約36兆6000億円に上昇、それ以来、毎年一兆円と増え続け、15年度には40兆円を超える事態となった。このままでは、2025年の総医療費は、50兆円を超える推定され、医療費削減が国の緊急課題となっている。

一方、現代の先進国の食生活においては、塩分の摂取量の70%が調味料、調理済み加工食品、弁当、外食などから摂取されており、これらの“隠れた塩分”とよばれる、ナトリウム(塩分)の過剰摂取の実態が鮮明に浮き彫りにされている。

社会的な減塩運動によって国民の食塩の摂取量を減らす政策のお手本はイギリスにある。政府は食品業界を巻き込んで、スーパーに並ぶ食品すべてに減塩基準を定めて減塩を推し進めた結果、心臓病の患者が減り、毎年2600億円もの医療費の削減につながったといわれる。今後益々、わが国も官民一体となって減塩に取り組む姿勢が強まってくることが予想される。

 

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増田 幸右 について

1964-1968 武蔵野美術大学 グラフィックデザイン科卒業 1968-1994 広告代理店電通入社 クリエーティブ・ディレクター 2002-2004 立教大学大学院 修士課程 2003-2008 (株)GN21 経営コンサルタント 2007-2010 浦安図書館ボランティアBCU会員 2010-2014 企業ブランドアドバイザー 2006-2014 日本海水学会員
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