9.食物酵素の豊富な和食

人間を含めすべての生命体は、食べた物を分解して栄養にして体の中に吸収され、栄養分をエネルギーに変えることで、呼吸や脈拍、筋肉を動かして生命を維持しています。生命活動に必要な酵素は5000以上といわれ、ひとつの酵素にはひとつの働きしかしないという特性があり、消化酵素と代謝酵素、そして食物に含まれる食物酵素の三つの酵素があります。酵素は全て化学反応の触媒として機能するタンパク質からできています。

食べ物の消化・吸収・排泄の新陳代謝は、食物酵素が担っています。酵素を補給するには、新鮮な野菜、果物、魚介類などの生の食品を食べることが第一です。

生の新鮮な食品には酵素が豊富に含まれており、和食には魚の刺身、新鮮な生野菜、果物、それに味噌、納豆、糠漬け、塩辛など、豊富な食物酵素が入っている食物の多いのが特徴です。生の食品に含まれている酵素は熱に弱いため、煮たり焼いたりすると失われてしまいます。

また、いつまでもカビが生えないパンなどの商品の保存性を良くする合成保存料、食品添加物は、微生物を殺菌して菌が生きられない環境をつくります。それらを食べ続けると、腸内細菌が分泌する酵素が減少し、食物の分解を助ける腸の善玉菌が減り、食物の消化・吸収力が衰え、腸内環境を悪化させる原因となります。

四季に恵まれた日本は、季節の折々に新鮮な旬の野菜や魚を食べることができる、まさに食物酵素の宝庫なのです。そして湿潤な気候風土には微生物が繁殖し、漬物の乳酸菌、納豆菌、酵母菌などにより、多彩な発酵食品が豊富にあります。

食物酵素は、焼いたり煮たり、蒸したりなど、熱を加えた調理をすると効果が低下してしまいます。焼き魚に大根おろしを添えて一緒に食べると食物酵素のタカジアスターゼが消化を助けるといったように、体内での消化が素早く行われて栄養が吸収されやすくなります。和食には、身体に優しい料理の知恵が生きています。

日本人が欧米人と比べて、少ない肉しか食べなくても健康で長寿なのは酵素を含む発酵食品を食べていた恩恵です。

1876年(明治9年)、日本に栄養学を紹介した外人医師のベルツが東京から日光まで旅をした記録、『ベルツの日記』のなかで当時の人力車夫が一日に50キロの道を走るのは当たり前という体力に驚嘆。彼らの食事が栄養学の知識からあまりにもかけ離れていたので、ドイツ流の栄養学に従って肉などを与えたところ、人力車夫は、三日で激しい疲労に見舞われ、そこで普段の質素な食事に戻したところ、また元気になって走れるようになったという、ベルツの人力車夫の実験が紹介されています。

山椒も小粒でピリリと辛い、日本人の体力の源泉は和食の賜物だったのです。

 

10.味噌汁の再評価

和食の食卓に、ご飯に味噌汁は欠かせない存在です。江戸時代の諺に「朝の味噌汁は毒消し」とか、「医者に金を払うより味噌屋に払え」といわれていたように、朝一番の味噌汁には健康効果があるということが体験的に信じられています。

江戸の庶民の生活は、ご飯に蜆の味噌汁、納豆に鰯の塩焼きといった質素な朝食で一日が始まります。現代の栄養学からみても、大豆発酵食品の良質なたんぱく質と小魚や海藻などのカルシウム、マグネシウムなどの豊富なミネラル、漬物の食物繊維など、栄養バランスの良いヘルシィな食事であることがわかります。

現代の食生活は、70年代ころから、インスタント食品、冷凍食品、レトルト食品などの加工食品が店頭に溢れ、電子レンジで温めればすぐに調理される、手間をかけないで食事ができる、ファーストフードの潮流が日本人の食のスタイルを大きく変えてきました。最近の一般家庭の朝食では、パン食が半数を占め、ご飯と味噌汁の和食を超える勢いだといわれています。米、味噌、塩の消費量がともに右肩下がりに減ってきています。

なかでも味噌汁は、塩分が多いと減塩運動の格好のターゲットにされ、減塩思想の象徴的な対象になっています。

ひと椀の塩分は、約2グラムだとすると、厚労省の塩分摂取量の基準である大人ひとり当たり一日8グラムの四分の一を摂取したことになり、食事から味噌汁と漬物を省けば、基準値に近くなるという発想が味噌汁の排除につながっています。

味噌に含まれる原料の塩は約17パーセントですが、味噌汁として飲むときには、塩分が約0.9パーセントに薄められます。それは、ひとが美味しいと感じる塩分濃度で、体液の塩分に近い濃度です。そして、味噌汁には、いろんな具が入っていて、具の入ったものを味噌汁と言っているわけですが、味噌汁の汁だけをとらえて塩分量を測定した結果だけが独り歩きしています。

味噌汁全体の栄養価を計る視点に欠けています。ある研究機関の免疫学の調査結果では、カルシウムと鉄分が一日必要量の約25パーセント占めているというデータがあります。ビタミンAを含んだ野菜の具の多い地域では、胃潰瘍やがんの死亡率が低いなど、栄養学的な味噌汁の効能が立証されてきました。

和食の危機が問われている現在、味噌汁の再評価こそ、先人の知恵を継承した和食文化を守る重要なカギになると期待しています。

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増田 幸右 について

1964-1968 武蔵野美術大学 グラフィックデザイン科卒業 1968-1994 広告代理店電通入社 クリエーティブ・ディレクター 2002-2004 立教大学大学院 修士課程 2003-2008 (株)GN21 経営コンサルタント 2007-2010 浦安図書館ボランティアBCU会員 2010-2014 企業ブランドアドバイザー 2006-2014 日本海水学会員
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