11.コラム 草食動物と塩

草食動物は、カリウムを含む植物を多食するため、ナトリウムの不足をきたし、塩分を欲しがるようになります。家畜の牛は一日に80グラム、馬は40グラムの塩を必要とし、カバは500グラムも摂取します。

野生の象や鹿、牛などの草食動物は、塩分を含んだ塩泉、沼地にある「塩なめ場」を求めて、平原に群れをなして移動していきます。未開の土地アメリカ大陸に移住した白人たちは、まず塩を確保するのに、野牛のバッファローの群れの「塩なめ場」の通り道をたどって塩湖や塩泉を発見したといわれます。

アメリカやイギリスにはソルトリック、あるいは、単にリック(なめる)の地名がついた町がいくつかあります。ドイツの塩の街、リューネブルグの塩泉を発見した白い猪の伝説、中国四川省では塩の「自流井」の発見に山羊が登場しています。日本では、ニホンカモシカが塩分を含んだ土をなめる習性があることがよく知られています。

ライオンなどの肉食動物が塩を欲しがらないのは、獲物となる動物の肉にナトリウムが多く含まれているため、あえて塩分を摂取する必要がないからです。

塩は生物の繁殖に深く関わっており、アフリカ象の生息数とその土地の塩分濃度を調べたところ、繁殖率が高いという報告があります。

家畜の場合は、必要な塩分を充分摂らないと子を産まなくなり、順調に育たないため、牧畜には、ミネラルを含んだ自然海塩や岩塩を餌に混ぜて与えています。

純度の高い食塩を与えると、流産や病気の発生がふえるので、専売時代にも酪農業では輸入天日塩を飼料に使っていたといわれます。古くから家畜用の飼料に鉄、銅、コバルト、ヨード、カルシウム、マグネシウムなど、ミネラルの入った固形塩がつくられており、広く普及しています。

民俗学者の宮本常一は著書『塩の道』のなかで、塩を運ぶ夜には、オオカミが来るから必ず焚火をして野宿したといわれます。また、山の中で働いている人たちは立ち木や壺の中に小便をすることを固く禁じられていたといわれます。

それは、壺に小便がたまるとオオカミだけではなく、鹿が舐めに来るので、そのときには必ず底の抜けた桶を使ったといわれます。トナカイが人間に飼育されるようになったのも、人間の尿に含まれている塩分を舐めるために人間に近づいて捕獲され、家畜になったといわれています。

最近、鹿が自動車にはねられる交通事故死が増えているというニュースが報じられていましたが、山林の開発で鹿の塩舐め場を失ったため、融雪用に撒いた塩を舐めに道路に出現してくるようになったことが原因だといわれ、あらためて生き物にとって塩はいのちに欠かせない存在であることを知らされます。

私たち人間も塩を摂取しなければ生きていけない草食動物です。人間の歯が草食に適した臼歯や小さな犬歯のかたちに進化してきたのは、食物が草や木の実、穀物であったことを物語っています。ひとの塩嗜好の根底には数千年におよぶ進化の過程で、塩欠乏の苦い経験が遺伝子にインプットされているといわれています。

 

 

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増田 幸右 について

1964-1968 武蔵野美術大学 グラフィックデザイン科卒業 1968-1994 広告代理店電通入社 クリエーティブ・ディレクター 2002-2004 立教大学大学院 修士課程 2003-2008 (株)GN21 経営コンサルタント 2007-2010 浦安図書館ボランティアBCU会員 2010-2014 企業ブランドアドバイザー 2006-2014 日本海水学会員
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