4.魚醤と熟れ鮓

米と魚の食文化圏で主に味の世界を演出しているのが魚醤です。魚醤とは、小魚やエビなど樽に詰め塩漬けにして発酵・熟成させたもので、魚の内臓に含まれる酵素でたんぱく質を分解し、アミノ酸発酵によってうま味を引き出した塩味調味料です。

稲作文化圏では、ご飯をたくさん食べる知恵として塩味や辛味の強い野菜の穀醤や小魚の魚醤の調味料として重要な役割を果たしています。

魚醤の発祥地は、東南アジアのメコン河流域とされ、雨季に大量にとられた川魚を塩漬けにして魚醤にしたもので、小魚やエビを原料にしたタイのナムプラー、ベトナムのニョクマム、小エビを発酵させたインドネシアにはサンパルなどの魚醤が、その国の代表的な料理の基本調味料となっています。

わが国には七世紀頃の飛鳥時代に魚醤がもたらされたといわれ、ハタハタを塩漬した秋田のショッツル、能登のイカのイシル、香川のイカナゴ醤油などの魚醤がうまれています。魚の獲れない山村では鮎の魚醤や蟹の塩辛など、地域の風土にふさわしいさまざまな魚醤がつくられており、その地方独自の郷土料理を彩っています。

奈良時代には、琵琶湖の鮒鮨のように魚の腹に塩と飯を詰めて漬け、飯の乳酸発酵により独特の風味をかもしだす「熟れ鮓」が登場します。

魚醤が進化した熟れ鮓は、本来塩と米の乳酸発酵を利用した魚の保存法でしたが、やがて塩だけではなく、独特な魚の生臭さをけすのに、麹、柚子、昆布などを加えて、樽に漬け込み、発酵・熟成させると魚と米を一緒に食べる寿司になります。

いまも北陸地方の金沢では、正月料理の一品として「カブラ寿司」がつくられています。カブラ寿司は、カブの塩漬けに冬場に獲れる脂がのったブリを挟んだものを糀で漬け込んだもので、ほんのりと糀とカブの香りがする、美味な熟れ鮓です。

自然界に生きるカビや酵母菌などの微生物を巧みに使い、発酵食品をつくるわがくにの発酵の技術・ノウハウは、和食を支えてきた先人の知恵の遺産といえます。

やがて室町時代に入ると、発酵した酸味のある米に魚をくわえた鮨がつくられ、自然発酵の熟成を待たずに麹で塩漬けした魚と酢めしを食べる、いまの握り寿司のルーツとなっていきます。

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増田 幸右 について

1964-1968 武蔵野美術大学 グラフィックデザイン科卒業 1968-1994 広告代理店電通入社 クリエーティブ・ディレクター 2002-2004 立教大学大学院 修士課程 2003-2008 (株)GN21 経営コンサルタント 2007-2010 浦安図書館ボランティアBCU会員 2010-2014 企業ブランドアドバイザー 2006-2014 日本海水学会員
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